2015年に観た映画10選

今年は新作映画をランキングにできるほど観れなかったので、旧作もひっくるめて2015年に視聴した作品すべてを対象に、良かった作品を10作選んでみました。

公開年は旧作は本国公開年、2015年に日本公開されたもののみ日本公開年としています。

 

【1位】ときめきに死す(84')


何年も前から観よう観ようと思いつつ、やっと昨年観ました。

オールタイムベスト級です。最高。

同監督では『家族ゲーム』なんかも大好きだったんですが、こっちのほうが圧倒されましたね。

単に印象的な絵が多いだけでなく、全編を通じて夏の北海道の涼しげな空気感が伝わってくるようで、観た後もその場に居合わせたような、こびりついて離れない感覚が残りました。

ただ、ラストシーンがあまりにも壮絶で、観終わってしばらく割と本気でヘコみました。

  

 【2位】野火(15')

予告観た時、全く期待してなかったんですよ。自主製作映画というものにほとんど馴染みがないので、ビデオ撮りの安っぽく見える映像の質感が、それだけで映画としての期待値を下げる原因にもなっていたし、ビデオカメラで撮影をしている人の存在が透けて見えるような気がして。正直今youtubeで予告編を観てもあんま面白そうじゃねえなあと思います。

 でもね、クリアな映像だからこその没入感、南国の熱気がねっとりまとわりついてくる肌感覚というのが確かにあったなと。あ、それと音がいいです。で、率直に言って地獄のような2時間でした。早く終わってくれ!ああでも傑作だもっと観ていたい!だめだ気が狂いそうだ!そんな自分の中のせめぎ合い。映画を観ながら極度の緊張状態に置かれていたので、主人公が戦場を抜け出した時本当に全身が脱力しました。

ご老人や子供連れのファミリーといった、幅広い層が観に来ていたのも印象的で、どこで聞きつけてきたんでしょうね。

 

【3位】バリー・リンドン(75')

キューブリック監督のカラー期の作品で、これだけ唯一見逃していたんですが、劇場で観る機会があったので満を持して観賞。

長尺だし、時代背景も詳しくないしで敷居が高そうに見えたので後回しにしてた本作ですが、主人公の立身出世をめぐる波乱万丈の物語は普通にワクワク楽しめてあっという間に3時間過ぎてしまうし、何といっても主人公の息子、ブライアンきゅんが死ぬほど可愛いですね!

「ブリティッシュ・グレナディアーズ」にのせて突き進んでいくシーンは有名ですが、やはり最高です。『パトリオット』にも類似したシーンがあってこれもいいんですが、前線の兵士たちがどんな心境なのか気になります。

 

【4位】キングスマン(15')

特撮オタとして、名乗りや決め台詞にこの上ないときめきを感じる性分なんですが、本作の決め台詞「Manners maketh man」は、言葉そのものの意味するところも、それを使うシチュエーションも最高にキマってて100点満点です。

もうひたすら楽しい映画でした。惜しむらくは、もっと傘アクションを堪能させてほしかったことくらいですかね。

 

【5位】ゾンビ(78')

なんか色んなバージョンがあるみたいですけど、Gyaoで配信されてたのはディレクターズカット完全版でいいのかな?それ観ました。

ホラーが苦手なので、ゾンビモノも本作含めたロメロ初期3部作くらいしか観てないんで下手なこと言えないなーとも思うんですが、本作はその3作の中でも一段と独特の雰囲気を持っているというか、こうやって淡々と牧歌的に世界は終わっていくんだなぁみたいな。ショッピングモールで立てこもってる主人公たちがスケートリンクやゲームコーナーで遊んでみたりしてるのが面白いですね。ゾンビモノと日常モノの親和性を感じたりして、「がっこうぐらし!」はしっかり本作の精神の延長にある作品なんだなと思いました。

「ゾンビが走るなんてもってのほか」みたいな意見があることだけは知っていたんですが、なるほど確かに本作を観ると、「普通にしていれば健康な大人なら逃げ切れるし、なんなら少しおちょくって遊ぶくらいの余裕すら持てる」相手から、逃げ場のない状況にまで追い詰められるのは独特の怖さがあるなあ。

 

【6位】イニシエーション・ラブ(15')

前田敦子は声がすごく魅力的な女優さんなんだなぁと知りました。

原作未読で情報完全にシャットダウンして観に行ったんですけど、気持ちいいくらいに騙されました。ラストの怒涛のネタばらし、劇場のざわつきもセットで最高でしたね!お行儀よく観賞してた観客たちを一気に狂騒に巻き込んで、ざわめきの中で幕を閉じるこの映画のあり方はめちゃくちゃかっこよかったし、最高にエンターテイナーしていたなぁと感じました。

 

【7位】そろばんずく(86')


「ときめきに死す」にハマってから、何作か森田芳光監督作品を観たんですが、その中で一番気に入ったのが本作でした。レビューサイトなんかの評判は軒並み低いですが、とにかくぶっ壊れててめちゃめちゃ面白い怪作ですよ!

ストーリーの脈略はあるにはあるけど、誰もが真面目に追っかける必要が無いとすぐ悟ると思うので、あとは尖りに尖ったシュールな演出の中からいくつお気に入りポイントを見つけるかが勝負みたいな感じです。自分が好きなシーンは、ノリさんが蕎麦屋に扮してライバル会社の会議室に潜り込む場面で、渡辺徹が小躍りしながらホワイトボードをひっくり返すと蕎麦の写真パネルが出てくるっていう、書いてて何が面白いのか全く伝わってないと思うんですが、すげえ好きなんです。そうそう、2回目の蕎麦屋のくだりは、箸が無いことをノリさんが糾弾されるシーンの絵がスタイリッシュでかっこよくて、何度も見返しました。そこからノリさんの一言でディスコに場面が切り替わる流れも秀逸ですよね。どうやったらこんなの思いつくんだろう。

 

【8位】東京物語(53')


『そろばんずく』の下で本当にいいんだろうかと、ランキングを作りながら何度も悩みました。

小津作品をはじめて観たんですが、こんなにスッと入ってくるとは思いませんでした。家族の温かみとか古き良き日本がどうたらみたいな映画では全くないです(そんな偏見を持ってました)。おそらく何百年前にも何百年後にもある、皆が抱える孤独についての物語です。この映画に出ている役者のほとんどが故人であることが、作品に描かれる生の営みのサイクルにより深みを与えているような気がします。

 

【9位】ゴジラVSビオランテ(89')

サイキック少年少女たちが一斉にゴジラの絵を掲げる場面、怪獣映画であんなにゾワッとくるシーン見たこと無いです。無機質な80年代のコンピュータ画面に淡々と映し出されるゴジラ警戒情報もじわじわ迫ってくる恐怖感があっていいですね。

ビオランテが無数の触手をくねらせながら突進してくる場面は圧倒されます。一本一本吊るした触手をスタッフ総出で動かしている様子がDVDのメイキングでも見れますが、こういうアナログな試行錯誤がある特撮はやっぱり良いものです。

 

【10位】の・ようなもの(81')

森田芳光監督3本目。予告編のクソダサいテロップは何なんだ。

主人公は何考えてるかはっきりしないし、話もどこに軸足を置いていいのかよく分からないまま進むので、全体的にはあんまりピンときてないんですが、ワンシーンだけ強烈に引き込まれる場面があります。

彼女のお父さんの前で落語を披露し、至極真っ当なダメ出しをされて、深夜から夜明けにかけての下町をひとりで家路に着く場面。ここから映画は落語の「道中づけ」によるトランス状態に入ります。どうしてこの場面に心を揺さぶられるのかうまく言葉にできないんですが、この高揚感とも切なさともつかない感覚を映像に乗せた一連のシーンは本当に素晴らしかったです。2015年に観た映画の中でワンシーンだけ選べと言われたら迷わずこれです。